乾杯とさよなら

酒とご飯、天満の嵐

年下の可愛い恋人

化粧品を三回に分けて使うといいと、教えてくれた同僚が、帰り際に恋人を紹介してくれると言うので、私は彼と帰る事にした。そういえば、恋人の誕生日ケーキを選ぶのを手伝ったのだった。
土砂降りの中、駅チカのカフェの前で「心の準備はいい?」と、笑いながら聞かれ、私も笑顔で頷くと、少し日に焼けた青年がひょっこり顔を出した。
言葉の端々から、私は彼の恋人が男性だと気付いていたし、何も驚くことはなかった。気付いていなかったとしても、驚きはしても、心の準備は必要なかった。彼の恋人は、私と同い年の気さくな青年で、今度仲間内で飲もうよと誘うと、いいですけど、尾崎さん、お酒強そうですねと朗らかに笑った。

同僚は、私のデスクに来ては、恋人とのノロケ話をこぼす様になり、私はそれに雑な相槌を打つようになった。でも、私は「心の準備はいい?」と聞いた彼に、そんな悲しい前置きなんていらなかったよ、と未だに言えないでいる。